

東京都府中市。大東京綜合卸売センター(府中市場)を有するこのまちで、内外問わず数多くの食事シーンを半世紀以上にわたり支えてきた企業があります。それが、府中市場内に拠点を構える株式会社笠井包装です。
食と密接に関わる専門分野で地域に貢献する笠井包装は、食品トレーから割りばし、業務用のかき氷シロップまで、食の現場に不可欠な「包装」と「資材」を扱うプロフェッショナル。今回は、二代目として事業を牽引する代表取締役の笠井 茂(かさい しげる)さんに、お店の成り立ちから、時代と共に変わる業界の変遷、そして地元事業者への熱いメッセージを伺いました。
市場の歴史とともに在るということ
株式会社笠井包装の歴史は、大東京綜合卸売センター(府中市場)の立ち上げ時から始まります。昭和46年頃に先代が独立し、昭和50年には現在の形となる株式会社笠井包装を設立。そのため、笠井さんの幼少期は常に府中市場とともにありました。


「年末年始やお正月などは店の手伝いに出てましたから、ほぼ市場に育ててもらったようなものです。弟なんかはよく、二階に上がるスロープに置いた段ボールの中で寝かされてましたよ(笑)」
幼少期から市場の活気の中で過ごしてきた笠井さん。ですが、初めから事業継承を前提としていたわけではありません。かつては「これからの時代はPCだろう」と、IT企業でシステムエンジニアとして働いていた時期もあったといいます。
先代の長期入院を機に26歳で家業を継いでから、笠井さんは業界の変遷に驚かされてきました。というのも、笠井包装が事業初期に主力としていた商材は、おむすびを包む木の皮や紐、木の折などの木材製品がほとんど。それが、食品トレーの登場を皮切りに、あっという間に発泡スチロールなどの石油製品が売り場を席巻。今もなお、商品は入れ替わりを続けています。
「最近は環境意識の高まりもあって、紙製品も増えています。ただ、価格の面ではまだ石油製品が優勢ですね」と、笠井さんは語ります。


「細やかな対応」を叶える市場の人情
食品包装業界は、いまや大手企業が市場の多くを占めているのが現状です。かつては府中市場内にも8店舗ほどあった包装資材を取り扱う同業者も、今では笠井包装を含めて2店舗が残るのみとなりました。


こうした逆境の中でも、笠井包装が地元の事業者から愛され続けている強みは、その細やかな対応力にあります。
たとえば、少数からのロット相談。メーカーによってはケース単位でしか販売できない商品もあるものの、基本は必要な個数に応じた発注が可能です。また市場ならではの機動性も魅力のひとつ。「市場内の肉屋さんに商品を頼んでるから、一緒に配達で持ってきて」など“ついで”のお願いにも柔軟に対応しています。
お客様のニーズに素早く、そしてきめ細かく応えられるのは、笠井包装が4名という少数精鋭体制だからこそ。スピーディーかつ顧客に寄り添った対応で、今では多摩地域を中心とした飲食店や食品工場をはじめ、役所や学食、ホテルなど、幅広い取引先の事業を裏方として支えています。


意図を読み取る力が常連を育てる
笠井包装が取り扱っている商品は多岐にわたります。その数は、在庫管理をしている笠井さんでさえも把握しきれないほど。中には店頭に出していないものや、特定のお客様にしか提案していないものもあるといいます。
「この仕事の楽しさは、巷の商品を見る目が変わるところ。たとえばスーパーに行っても、自然と包装資材に目が行きます。業者向けの展示会に行くと面白いですよ、『ここの商社さんの商品はどんどん上げ底になってるな』とか(笑)」


包装資材のプロフェッショナルとして、常に最新情報を仕入れ、流行や業界の動向を把握している笠井さん。そんな笠井さんをもってしても未だに難しいのが、お客様から寄せられる“抽象的なオーダー”だといいます。
「包装資材はたいてい、商品名や番号が覚えづらい。だから、お客様からのお電話も『よくあるアレ』や『うちで使ってるお弁当箱』といった注文が多いんです。その場は『はい、いつものですね』と答えながら、裏では毎回、過去の注文履歴を精一杯遡ってますよ」
過去あったエピソードの中でもひときわユニークだったのが、役所の見積りに書いてあった「乳首」の二文字。いったい何のことかと戸惑った笠井さんでしたが、そこはプロの推察力。「ピジョンの哺乳瓶の飲み口のことか」とピンときたときには、さすがに笑ってしまったそう。こうしたお客様の意図を汲み取る力こそが、地元に根づいた事業の真骨頂なのかもしれません。
お客様の幸せをプロとして支援するために
笠井包装の売れ筋商品は、お持ち帰り用のテイクアウト容器や食品トレーなど。その他、『リード』などのペーパー類も人気だといいます。他にも府中市場の中でも比較的早くから取り扱いを始めた、1本で約60個分作れるという業務用かき氷シロップは、夏の季節の定番商品。スプーンストロー、かき氷容器などと併せて、学園祭用にまとめて売れることも多いそう。


包装資材は、どうしても100個単位の大きなロットでしか買えないイメージが根強いもの。その点、府中市場に店舗を置く笠井包装なら、飲食事業者だけでなく、個人のお客様向けの相談にも親身になって応えてくれます。
「身内でBBQをしたいとか、お祭りで出店を出したいとか、ちょっとしたことからでも構いません。なんでも気軽に相談してもらえれば嬉しいです」と、笠井さんは微笑みます。
自由気ままに、楽しく挑戦し続けていく
大学生から役所の職員まで、多種多様なお客様の信頼を一手に担っている笠井さん。大手にはない“ちょうどいい距離感”とあたたかさこそが、笠井包装が50年以上も地域から愛されている理由なのだろうと感じました。
「小さな困りごとでも、頼られたのなら、一つずつ着実に応えていきたい」と語る笠井さん。これからも笠井包装は地域の暮らしを支えながら、流れゆく時代の変遷を静かに照らし続けていくことでしょう。



株式会社笠井包装
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