「おさかな食堂うおよし」店主・大内勝さんが語る市場の魅力

「おさかな食堂 うおよし」の店主が笑顔で店先に立つ様子。青い暖簾には食堂の名前が書かれ、提灯風の飾りが吊るされている。店内には調理中のスタッフが見え、メニューが書かれた黒板や貼り紙が周囲に掲示されている。親しみやすい雰囲気が漂う海鮮食堂の外観。
「おさかな食堂うおよし」店主の大内勝さん、店先にて
「おさかな食堂 うおよし」の店主が笑顔で店先に立つ様子。青い暖簾には食堂の名前が書かれ、提灯風の飾りが吊るされている。店内には調理中のスタッフが見え、メニューが書かれた黒板や貼り紙が周囲に掲示されている。親しみやすい雰囲気が漂う海鮮食堂の外観。
「おさかな食堂うおよし」店主の大内勝さん、店先にて

 個人商店が集まる市場には、特有のあたたかさがあります。大型スーパーが便利な存在として台頭してきた一方で、人々が創る独特のつながりや交流こそ、市場の持つ最大の魅力ではないでしょうか。大東京綜合卸売センター(府中市場)では、常連さんとの軽い会話や店主に調理法を尋ねるやりとりなど、日常的に人と人が交わる瞬間があります。

 今回は、そんな市場の1番通路で「おさかな食堂うおよし」を営む店主・大内勝さんに、市場の魅力と取り組みについてお話を伺いました。

コロナを乗り越える——再生のための挑戦

府中市場内の「1通路」と記された建物の外観。青い看板に黄色の文字が目立つ。窓にはカーテンがかかり、隣には「飲食のご案内」と題されたメニュー看板や「歳末感謝祭」のポスターが貼られている。市場の活気を感じさせる一角の様子。
大東京綜合卸売センター1番通路の入口
府中市場内の「1通路」と記された建物の外観。青い看板に黄色の文字が目立つ。窓にはカーテンがかかり、隣には「飲食のご案内」と題されたメニュー看板や「歳末感謝祭」のポスターが貼られている。市場の活気を感じさせる一角の様子。
大東京綜合卸売センター1番通路の入口

 「おさかな食堂うおよし」の他、「酒処Uchi」「めしや おかわり」と、府中市内に人気飲食店を3店舗経営している大内さん。地元である分倍河原に1号店である「酒処Uchi」を構えて以来、絶えず挑戦を続けてきました。

 初めは「好きな競馬や野球を流しながら、楽しく飲める場所を地元で始めたい」というきっかけから始めた店たちが、今は地域とのつながりを強くする役割を果たしているといいます。

「おさかな食堂 うおよし」の店舗前で笑顔で立つ男性店員。店の暖簾には魚のデザインが描かれており、上部に提灯型の飾りが点灯している。入口には魚のポスターや黒板メニューが掲示されており、日替わり定食や丼ものの価格が書かれている。店内には調理中のスタッフの姿が見える、家庭的で温かい雰囲気の食堂。
昼営業後の「おさかな食堂うおよし」
「おさかな食堂 うおよし」の店舗前で笑顔で立つ男性店員。店の暖簾には魚のデザインが描かれており、上部に提灯型の飾りが点灯している。入口には魚のポスターや黒板メニューが掲示されており、日替わり定食や丼ものの価格が書かれている。店内には調理中のスタッフの姿が見える、家庭的で温かい雰囲気の食堂。
昼営業後の「おさかな食堂うおよし」

 彼が大東京綜合卸売センターで店舗を構えたのは、コロナウイルスの混乱がピークを迎えた約4年前のことでした。飲食業に大打撃を与えたコロナ渦は、府中市場にもまた大きなインパクトを与えたといいます。長く府中の地で育ってきた大内さんにとって、幼い頃から馴染みの深かった市場がみるみるうちに衰退していく様は、やはり胸に迫るものがあったそうです。

 そこで大内さんが考えたのが、市場を再び活気づけるような『市場らしいお店』を始めること。元気よく「いらっしゃいませ!」と声掛けするようなお店ができれば、市場に元気が戻るのではないか。「それまで居酒屋形態の店しかやっていなかった私にとっても、これは勝負所だと思ったんです。緊急事態宣言下であっても、お酒を出さない飲食店なら開けられる。魚も場内で買えますから、ダイレクトに市場も活性化できると考えました」と、大内さんは語ります。

若者たちを魅了する「新たな市場」

府中市場内の通路の様子。左側にはガラス張りの店舗や販売ブースが並び、手作り商品やポスターが飾られている。右側には閉店中のシャッターが目立つ。中央奥には歩く人の姿が見える。市場独特の雰囲気と活気を感じる通路。
1番通路には多くの飲食店が並ぶ
府中市場内の通路の様子。左側にはガラス張りの店舗や販売ブースが並び、手作り商品やポスターが飾られている。右側には閉店中のシャッターが目立つ。中央奥には歩く人の姿が見える。市場独特の雰囲気と活気を感じる通路。
1番通路には多くの飲食店が並ぶ

 「おさかな食堂うおよし」をはじめ、他にも大東京綜合卸売センターに飲食店が増えてくると、次第に市場自体の顧客層にも変化が見られるようになりました。市場内のお花屋さんによれば、たとえば母の日のように、以前は贈り物を受け取る側である母親世代がメイン顧客として訪れていたようなイベントも、今では子ども側である若い世代が贈り物を買いに訪れるようになったと言います。

 平日のお客様は、近所に住む常連さんや工事現場の作業員さん、市場で買い物をする人々などが中心。一方、週末には家族連れも多く見られます。市場のノスタルジックな雰囲気は大きな魅力ですが、大内さんいわく、別の理由もあるのではないかとのこと。

 「大東京綜合卸売センターはね、駐車場料金がかからないんですよ(笑)。車で来る人が多い分、昼夜問わず、お酒はあんまり出ないんですけどね。その分、おいしい食事を楽しんでもらえたら嬉しいです」と微笑む大内さん。

店舗前に置かれた「おさかな食堂 うおよし」の黒板メニュー。手書きで鮮魚定食や丼もの、焼き魚などの詳細が記載されており、価格がわかりやすく表示されている。黒板上部には季節感のある飾り付けがされ、黄色い紙には白米値上げの案内が書かれている。手作り感のある親しみやすい雰囲気が感じられるメニュー板。
とある日のメニュー例

市場の魅力——新鮮な食材と人とのつながり

木製のトレーに盛られた定食の写真。新鮮な刺身が美しく盛り付けられた海鮮丼、海藻が入った味噌汁、小皿に盛られた副菜、醤油の小皿、そして箸がセットされている。シンプルながらも丁寧に準備された和食の一膳。
贅沢4色丼は新鮮な刺身が美しく盛り付けられた逸品
木製のトレーに盛られた定食の写真。新鮮な刺身が美しく盛り付けられた海鮮丼、海藻が入った味噌汁、小皿に盛られた副菜、醤油の小皿、そして箸がセットされている。シンプルながらも丁寧に準備された和食の一膳。
贅沢4色丼は新鮮な刺身が美しく盛り付けられた逸品

 「おさかな食堂うおよし」のメニューには、市場内で仕入れた鮮魚や野菜などがふんだんに取り入れられています。四色丼や刺身定食、アジフライやカキフライなど、場内ならではの鮮度が感じられる品々は、大人から子どもまで、幅広い層の舌を唸らせています。

 「市場の食材でやるのがコンセプト」と語る大内さん。仕入れはすべて大東京綜合卸売センター内で完結しています。顔見知りの店主との会話や、その日特別に目を惹いた食材を積極的に取り入れることで、素材の魅力を最大限に引き出すとともに、地元経済にも貢献しています。

厨房で作業中の2人の女性スタッフが笑顔を見せている様子。手前には洗浄中の食器や調理器具が見える。背景には調理場の道具や棚に並んだ食器が並び、温かみのある雰囲気を感じさせる。
「おさかな食堂うおよし」の店員さん、弾ける笑顔が素敵
厨房で作業中の2人の女性スタッフが笑顔を見せている様子。手前には洗浄中の食器や調理器具が見える。背景には調理場の道具や棚に並んだ食器が並び、温かみのある雰囲気を感じさせる。
「おさかな食堂うおよし」の店員さん、弾ける笑顔が素敵

 市場は、単なる商品売買の場にとどまりません。店主と客が互いにコミュニケーションを取りながら、買い物という体験を楽しむことで、調理方法についての会話が生まれたり、変わった食材を見つけて驚いたり……。人と人が自然に交流する機会に多く恵まれているのが、市場が持つ最も大きな利点かもしれません。「『人とのつながり』を楽しめるチャンスこそが、市場の最大の魅力かもしれませんね」と、大内さんは笑います。

未来の子どもたちへ繋ぐための種まき

壁には飲食店「うおよし」に訪れた有名人のサイン色紙が複数枚飾られており、日付やメッセージが書かれている。中央には宴会プランの案内も掲示されており、料金や内容が手書きで記載されている。下部には名刺やQRコードが貼られている。壁全体が親しみやすい雰囲気を醸し出している。
お店には多くの著名人も訪れている
壁には飲食店「うおよし」に訪れた有名人のサイン色紙が複数枚飾られており、日付やメッセージが書かれている。中央には宴会プランの案内も掲示されており、料金や内容が手書きで記載されている。下部には名刺やQRコードが貼られている。壁全体が親しみやすい雰囲気を醸し出している。
お店には多くの著名人も訪れている

 大内さんは今後、もっと多くの子どもたちが市場へ遊びに来るようになってほしいと願っています。自身も府中で育ち、子どもの頃から市場に親しんできた経験があるからこそ、次の世代にも今のうちから市場に親しんでおいてほしいそう。「子どものうちから市場の存在を知っていれば、大人になった後も自然と市場を使うようになる。そうした流れを作るためにも、積極的に若い人や子どもたちを呼び込むような施策は打ちたいですね」と、大内さん。

 大東京綜合卸売センター内の組合理事を務める大内さんは、上記のような思いから、市場を用いて地域全体を盛り上げるための取り組みを積極的に行っています。最近行ったのは、府中とジャズ音楽のコラボレーションイベントである「JAZZ in FUCHU」への協力。観客からはもちろん、演者からも「市場というレアリティの高い場でパフォーマンスが披露できるなんて」と、たいそう好評だったそうです。このように大東京綜合卸売センターでは、市場全体をさまざまな表現の場としても提供することで、地域の文化活動にも貢献しているのです。

あたたかな交流と発見が待つ市場へ

 市場の楽しみは、『人』そのもの。お店側とお客さん側が互いに声を掛け合う雰囲気や、常連さん同士の会話など、ここでしか味わえない交流が市場にはあります。「個人商店の温かさや、人との会話が楽しめる場所として、ぜひ気軽に足を運んでみてください」と、大内さんは語ってくれました。

スタッフが箸を使って小皿に切り干し大根の煮物を盛り付けている様子。切り干し大根には人参が混ざり、味付けされた家庭的な料理がプラスチック容器に入っている。背景にはエプロン姿のスタッフの姿が見える。
ひとつずつ丁寧に作られるお惣菜たち
スタッフが箸を使って小皿に切り干し大根の煮物を盛り付けている様子。切り干し大根には人参が混ざり、味付けされた家庭的な料理がプラスチック容器に入っている。背景にはエプロン姿のスタッフの姿が見える。
ひとつずつ丁寧に作られるお惣菜たち

 市場での体験を通じて、地域の魅力を再発見し、次世代にその魅力を伝えていく——。「おさかな食堂うおよし」では、そんなあたたかな循環を作り出すための一助として、今日も訪れた人々においしい食事を提供し続けています。

食堂の外観写真。青い暖簾に店名のロゴが描かれ、上部には提灯や飾りが吊るされている。店頭には黒板メニューが置かれ、旬の魚介料理の価格や内容が記載されている。ショーケースには鮮魚や商品が並び、店内ではスタッフが作業中。温かみのある雰囲気の店構え。
これからも市場を訪れる人々のお腹を満たしていくだろう
食堂の外観写真。青い暖簾に店名のロゴが描かれ、上部には提灯や飾りが吊るされている。店頭には黒板メニューが置かれ、旬の魚介料理の価格や内容が記載されている。ショーケースには鮮魚や商品が並び、店内ではスタッフが作業中。温かみのある雰囲気の店構え。
これからも市場を訪れる人々のお腹を満たしていくだろう
今回取材したのは…
青い暖簾に「おさかな食堂 うおよし」と白い文字で書かれたデザイン。暖簾の上部には提灯風の飾りとライトが飾られ、温かみのある雰囲気が感じられる。背景には店内の一部やポスターが見える。

おさかな食堂うおよし
公式InstagramFacebook

【店舗住所】
〒183-0025 東京都府中市矢崎町4丁目1 1番通路
TEL : 080-2392-7431

【営業時間】
◆月曜日~金曜日
(朝)9:00-10:00
(昼)10:00-15:00
※月1回程度、金曜夜の営業あり/18:00-21:00

◆土曜日
(朝)7:00-10:00
(昼)10:00-15:00

【定休日】
日曜日、ほか市場の休市日

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この記事を書いた人

関口裕美のアバター 関口裕美 ㈱フォートリー 代表取締役

ライター。または広告をはじめとしたクリエイティブ制作事業および採用コンサルティング事業を営む株式会社フォートリー代表取締役。好きな食べ物はイギリス菓子といちごと「爺ヤンのブルーベリー畑」さんの採れ立てブルーベリー。
プライベートは1児の母。結婚を機に府中へ移り住み、季節毎にけやき並木で行われる恒例行事やイベントを家族で楽しんでいる。