「60歳から動くより、50代から動く方が身体も動く――そう考えて、長く勤めた製薬メーカーを56歳で早期退社したんです」。そう笑うのは、美好町通り沿いで日本酒主体の和食酒処「梵 SOYOGI」を営む、店主の金森惟方さん。旧甲州街道と新甲州街道の間、美好町公園入口交差点近くに、その隠れ家はあります。
やりたいことに挑戦するなら、少しでも若い方がいい。もともと定年後は会社に残らず、何かやろうと思っていたという金森さんが目指した次のキャリアは、大好きな日本酒主体の店を始めること。若い頃から料理を愉しみ、人生を通じてその情熱を深めてきた彼ならではの集大成が、58歳でオープンした「梵 SOYOGI」という店でした。
全国から厳選して集めた日本酒と厳選素材とともに、ぜいたくな隠れ家のような空間を創り上げる彼に、お店のこだわりと楽しみ方を伺いました。
自由に楽しめる“完全貸し切り制”の隠れ家
「誰にも気兼ねすることなく、自由な時間をくつろいでもらいたいんです」
そう語る金森さんが大切にしているのは、完全予約・貸し切り制のお店であること。
金森さんの仕事は、予約を受け付けた時点から始まります。まずは素材集め。鮮魚を地方から取り寄せたり、季節の野菜を仕入れたりと、各地への手配が始まります。アレルギーや嫌いなものにもしっかり対応。コースの構成やメイン料理も、お客様の人数やシーンに合わせて柔軟に対応しています。
お店の規模はこじんまりとしたもので、カウンターが5席に、テーブル席が8~12席ほど。とはいえ、どれだけ少人数のお客様からのご予約であったとしても、予約が入った時点で貸し切り対応にしてしまうため、大抵は広々と使えるそう。他のお客様と被ることもないため、話した内容が他に聞かれることもありません。込み入った商談や会食、趣味の友人との集まりにもぴったりです。
「お子様連れのお客様も大歓迎です。以前いらした『ママ友会』の皆さまには、お子様に当店の動画配信サービスをお見せして、その間に親御さんにゆっくりとコースをお楽しみいただきました」と金森さん。大切な時間を、人の目を気にすることなく過ごせる安心感が、静かにリピーターを増やしています。
旬と個性が響き合うオーダー体験
『梵 SOYOGI』の食事は、コース利用が前提。昼夜ともに料金は変わらず、3,800円/4,800円/7,500円(税別)の3種類からコース選んでいただくそうです。「ドリンク代は別にいただいています。飲み放題プランなどは特にありませんが、その代わり、何時間お楽しみいただいても大丈夫です」と、金森さん。
季節に応じて、旬の素材やおすすめの料理を出している『梵 SOYOGI』。ですが、決して既存の型に囚われることはありません。「利用時にはぜひ、食べたいものを教えてほしい」という金森さんの言葉通り、『梵 SOYOGI』のコースはお客様のリクエストに応じたオーダーカスタマイズ制。「あれが食べたい」という声があれば、積極的にメニューに組み込んでいます。
季節ごとの料理例
■特別企画/香箱蟹コース:11月中旬~12月末限定
毎年大人気!北陸地方で獲れる雌のズワイガニを、手を汚さずに食べられるよう甲羅に納めてご提供。
・7,500円コース(香箱蟹1杯)
・10,000円コース(香箱蟹1杯&香箱蟹小鉢+香箱蟹飯で計2杯を使用)
■通常コース:通年
すべてのコースには能登の鮮魚、信玄どりが入ります。
細かいメニュー内容は季節やお客様のお好みなどにより異なります。
・3,800円コース(8品)
・4,800円コース(10品)
・7,500円コース(12品/特別料理含む)
■豆乳だしでいただく「鰤しゃぶ」:2月以降
「氷見の寒ブリ」と同じ漁場で獲れる、脂の乗った鰤を楽しめます。
■能登直送の鮮魚料理
白身魚を使った刺身や天ぷら。青がにやふぐなど季節に応じた素材が強みです。
■信玄鶏の焼き物
山梨の無添加飼料で育った鶏肉のジューシーな逸品。
「お酒と料理で遊ぶ」――80種類以上の厳選日本酒
「日本酒と合わせながら、いろいろな料理を少しずつ楽しんでもらいたい」と語る金森さん。大の日本酒好きだからこそ、すべての料理は日本酒とペアリングできるよう考えているのだとか。
『梵 SOYOGI』では、北は秋田から南は佐賀まで、約80種類以上の日本酒を常備。どれも金森さんが酒屋や酒蔵を巡り、自ら選んだものばかり。「お客様のお好みを伺いながら、最適なお酒をご提案するのが楽しいんです」と笑う金森さんのお店の冷蔵庫には、日本酒好きにはたまらない品々がずらりと並んでいます。
おすすめ銘柄の一例:
- 「びわこのくじら」(滋賀):しっかりとした味わいで、脂の乗った焼き鳥との相性抜群
- 「春心」(石川):しっかりとした旨味と爽やかな酸味
- 「Te to Te(てとて)」(滋賀):フルーティーで軽やかな甘みが、後口に程よいキレ
「お気に入りの1本を探す感覚で楽しんでほしい」という金森さんのサービス精神もあって、ついつい盃が進んでしまうお客様も多いのだそう。
ちなみに『梵 SOYOGI』では、お酒が飲めない人でも雰囲気をじゅうぶんに楽しんでもらえるよう、ノンアルコール飲料も充実。お子様が多い予約時には、ジュースのラインナップもより一層増やしておくのだとか。「飲めない方も遠慮せずに、料理だけでも楽しんでください」と笑顔を見せてくれました。
食と交流が生む、地域の新しい風景
『梵 SOYOGI』では、こだわりの日本酒や料理だけでなく、絆を深める関係づくりも大切にしているとのこと。繋がりのある事業者とも協業しながら、発酵食品を楽しむ“麹教室”のワークショップや、多彩な事業者が集まるフェス企画などを定期開催しています。
「貸し切り空間だからこそ、イベントも自由な発想で行っています。『開催してみたい』という声があれば、うちの店を活用して発信の場にしてもらえれば」。『梵 SOYOGI』は、いまや単なる酒処を超え、多様な交流の場へと進化しつつあります。
11月3日(日)~4日(月)は、年4回のペースで定期開催している独自イベント企画「スマイル・フェス」の実施日。ソフトドリンクやお酒を愉しみながら、さまざまな出展者が織りなすブースを楽しめるそうです。
心地よいひとときが味わえる隠れ家で
まるで隠れ家のようなお店で味わえるのは、単なる食事ではありません。季節の和食と、それらを引き立てる特別な日本酒を楽しみながら、誰にも邪魔されない貸し切り空間で、心ゆくまでリラックスできる場所――それが『梵 SOYOGI』です。
「お客様と過ごす時間が、何よりの楽しみなんです」とほほ笑む金森さん。これからも挑戦を続け、人々に愛される店へと育てていこうとする彼の姿勢こそ、このお店の一番の魅力だと感じました。
『梵 SOYOGI』公式LINE
梵 SOYOGI
〒183-0045
東京都府中市美好町3-9-3 ゴールドフォレスト101
TEL : 080-2392-7431
営業時間 : 完全予約制のため希望に応じて開店
定休日:なし(曜日を問わず予約可)