「ピクニックコンサート」がもたらす母親への赦し──代表・柴田由香莉さんの目指す未来

明るい日差しの下、緑の刺繍が入った黄色いワンピースを着た女性が、イベントのチラシを笑顔で持っている。背景には広場とビルが見え、時計やフェンスが配置されている。チラシには「ピクニックコンサート」と書かれており、カラフルなデザインが目を引く。
「ピクニックコンサート」代表・柴田由香莉さん
明るい日差しの下、緑の刺繍が入った黄色いワンピースを着た女性が、イベントのチラシを笑顔で持っている。背景には広場とビルが見え、時計やフェンスが配置されている。チラシには「ピクニックコンサート」と書かれており、カラフルなデザインが目を引く。
「ピクニックコンサート」代表・柴田由香莉さん

 「まるで広い公園でピクニックでもするように、のびのびとコンサートを楽しんでほしい」。そう語るのは、親子で非認知能力を育むリトミック教室「nicoリト」を主宰する柴田由香莉さん。2024年12月28日(土)、親子で楽しめる超参加型のインクルーシブな親子コンサート「ピクニックコンサート」を開催する背景にはどのようなストーリーがあったのか、そして、これからのご予定や展望について伺いました。

おぼろげだった夢を現実にするまで

 「いつか“おかあさんといっしょ”のようなコンサートをやりたいと思っていた」と語る柴田さん。しかしながら、初めはこの夢も潜在的な憧れにすぎませんでした。2024年に開校したリトミック教室「nicoリト」を軌道に乗せていく中で、市が運営する地域課題解決プラットフォーム「みんぷら」での対話が転機となり、徐々に具体性を持つようになってきたといいます。

マイクを持ちながらプレゼンテーションを行っている女性。白いブラウスを着用し、机の上にはHPのノートパソコンが置かれている。女性は笑顔で指を指しながら話しており、教室や会議室のような背景が見える。
「みんぷら」全6回の学びの中で、やりたいことが形になっていった
マイクを持ちながらプレゼンテーションを行っている女性。白いブラウスを着用し、机の上にはHPのノートパソコンが置かれている。女性は笑顔で指を指しながら話しており、教室や会議室のような背景が見える。
「みんぷら」全6回の学びの中で、やりたいことが形になっていった

「幼稚園教諭をしていた頃も、今のリトミック教室でも、変わらずに感じるのは『世の中のママたちって、本当に頑張ってるな』という気持ち。日々一生懸命に子どもたちを育てながらも、周りにはなるべく迷惑をかけないように……と配慮して、悩んで……。そんなお母さんたちの力になりたかったんです」

 産後ママ向けに行った事前アンケートでは、柴田さんの予想通り、人に迷惑をかけないよう気張るママたちの声が集まりました。子どもが泣くんじゃないか、立ち歩くんじゃないか、お腹が空いてぐずったらどうしよう、座席形式だと逃げられない……子ども向けコンサートに対する赤裸々な杞憂が浮き上がってきたといいます。

 「だったら、すべての悩みを解決できる形にしよう!」と決まったコンサートは、これまでにない形となりました。座席はなく、フルフラットな空間にレジャーシートを敷いて鑑賞。演奏中は泣いても良し、移動してもよし、食べても良し。ユニークなテントスペースまで設けています。

本当の意味で「みんなで楽しめる」コンサートを

 ピクニックコンサートのコンセプトは、ママ・パパ自身の自己肯定感を上げ、家族みんなで楽しめるコンサート。参加する親御さんたちにも心から楽しんでほしいという想いから、自由でストレスフリーな舞台づくりを目指しています。

 参加者はレジャーシートを持参。まるで公園のお気に入りスポットでレジャーシートを広げるかのように、寝転がっても構いません。会場はフルフラットのため、車いすやベビーカー、身体が不自由な方も安心・安全です。子どもの空腹を満たすために、お菓子やジュースの持ち込みも可能。子どもたちが飽きたり、泣き出したりしたときのために、逃げ場として後方のキッズスペースも確保しています。

白い「Ravissant」とプリントされたTシャツを着た女の子が、木製の弁当箱を持ちながら微笑んでいる様子。弁当箱にはおにぎり、唐揚げ、ソーセージ、ミニトマトなどが詰められている。背景には木製のテーブルと緑の植物が並んでいる。
おにぎりにからあげなど、子どもに愛されるラインナップだ
白い「Ravissant」とプリントされたTシャツを着た女の子が、木製の弁当箱を持ちながら微笑んでいる様子。弁当箱にはおにぎり、唐揚げ、ソーセージ、ミニトマトなどが詰められている。背景には木製のテーブルと緑の植物が並んでいる。
おにぎりにからあげなど、子どもに愛されるラインナップだ

 もうひとつの目玉に、『ジブンdeべんとう』という企画があります。これはルミエール府中内のカフェ『さくらガーデン』とのコラボ企画で、会場内に設置されたお弁当の具材を、参加者が各自でお弁当箱に詰めていくというもの。これも、ママさんが周囲を見回したときに、その内容に優劣を感じてほしくないという発想から生まれた企画でした。さらには、子どもたちが自ら具材を詰めることで、「できた!」という主体的な刺激を味わってもらう目的もあります。

 柴田さんはこのコンサートで、参加者がお互いの事情を理解し、認め合うことをと願っています。「誰にも迷惑をかけないなんて無理なこと。だからこそ、皆がそれぞれに対して『いいよ、いいよ』とあったかく接してもらえれば」と語ります。

人同士の縁が紡ぐ成功への架け橋

 当初は小規模開催しようとしていたピクニックコンサートは、柴田さんの予想を大きく超え、すでに230名を上回る動員を見込んでいます。柴田さんはもともとリトミックの同業者を集めたコミュニティを運営していたことから、今回のイベントを応援してくれる仲間も多かったそう。府中市内からの参加者はもちろん、遠方からの申し込みもそれなりにあったといいます。

5人のメンバーが紹介されているバナー画像。背景は青空で、それぞれの名前や役割、メッセージが記載されている。左から順に、打楽器奏者「竹下かずひで」、ピアニスト「深堀ななこ」、歌のおねえさん「柴田ゆかり」、歌のおにいさん「土井あやと」、マネージャー「前川みお」。明るい笑顔で楽しさを伝える雰囲気が特徴的。
企画に賛同して集まった、かけがえのない仲間たち
5人のメンバーが紹介されているバナー画像。背景は青空で、それぞれの名前や役割、メッセージが記載されている。左から順に、打楽器奏者「竹下かずひで」、ピアニスト「深堀ななこ」、歌のおねえさん「柴田ゆかり」、歌のおにいさん「土井あやと」、マネージャー「前川みお」。明るい笑顔で楽しさを伝える雰囲気が特徴的。
企画に賛同して集まった、かけがえのない仲間たち

 ともにコンサートを創る仲間との出会いもまた、人との縁がもたらした成果といえるでしょう。かねてから親交のあったママ友が、実は元歌手であることがわかったり、通っていたボイストレーニング教室から紹介してもらったりと、さまざまな繋がりが企画を紡いでいます。「どうしてもやらなければならないことが多い中で、何をお願いしても快く受け入れてくれる仲間が多くいるのは、本当にありがたいですね」と、柴田さん。

 苦戦したのは資金面の確保でした。小道具や衣装、テントの確保など、今回のイベントでかかるものはすべて自前。すべてを合わせると、個人で用意するには大きすぎる金額がかかります。無理して出そうとすれば持続性はなく、それでも子どもの参加費は無料にしたい……。悩む柴田さんが選んだのは、協賛募集とクラウドファンディングを行う道でした。

クラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」のプロジェクトページが表示されている。「ママの不安に寄り添ったピクニックスタイルの親子コンサートを作る!」というプロジェクトタイトルで、東京都府中市にて親子を対象にしたコンサート開催を目指している内容が記載されている。目標金額40万円に対し、支援総額は60万5千円(151%)を達成。支援者数は42人で、募集は終了済み。家族が笑顔で楽しむ様子の写真が使用されており、温かい雰囲気が伝わるデザイン。
初のクラウドファンディングも大成功を収めた
クラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」のプロジェクトページが表示されている。「ママの不安に寄り添ったピクニックスタイルの親子コンサートを作る!」というプロジェクトタイトルで、東京都府中市にて親子を対象にしたコンサート開催を目指している内容が記載されている。目標金額40万円に対し、支援総額は60万5千円(151%)を達成。支援者数は42人で、募集は終了済み。家族が笑顔で楽しむ様子の写真が使用されており、温かい雰囲気が伝わるデザイン。
初のクラウドファンディングも大成功を収めた

 「メンバーの皆には、スポンサー企業様の対応や、協賛特典であるCMソングの作成など、あらゆる面で支えてもらっています。他にも『みんぷら』の同期やメンターの方々、リトミック講座をやらせてもらっているkotocafeの代表など、さまざまな方からの後押しがあったから今がある。感謝しています」と、柴田さんは嬉しそうに笑います。

すべての母親が自己を肯定できる未来へ

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この記事を書いた人

関口裕美のアバター 関口裕美 ㈱フォートリー 代表取締役

ライター。または広告をはじめとしたクリエイティブ制作事業および採用コンサルティング事業を営む株式会社フォートリー代表取締役。好きな食べ物はイギリス菓子といちごと「爺ヤンのブルーベリー畑」さんの採れ立てブルーベリー。
プライベートは1児の母。結婚を機に府中へ移り住み、季節毎にけやき並木で行われる恒例行事やイベントを家族で楽しんでいる。